生駒山系に連なる金剛・葛城山系の主峰『金剛山』から始めた山登り。その時々で気になる山へ、気の向くままに・・・

シュリンゲ(別名:スリング) 

20101005-2.jpg
シュリンゲ(12mm☓120cm) ※夢のダイニーマ新素材のもの。

先日の槇尾山において、秘境である清水の滝を巻いて登るのに
少々命がけであったわけであるが、中村さん持参のシュリンゲに何度か助けられた。
シュリンゲの手軽さと丈夫さに気づいてすぐさま購入したものがこれ。

シュリンゲ、スリング、どちらも同じ意味で、登山の主にロッククライミングなどの
登攀(とうはん)に用いられれる重要な装備の一つ。
ドイツ語でシュリンゲ、英語でスリング。
スリングで検索すると「抱っこヒモ」ばかりがHITしてしまうので、シュリンゲと呼ぶほうが良いかも。
見た目はただのヒモを環状につないだだけの頼りなさそ~な輪っか。
ところが驚くべき性能を持っている。
クライミングではこれに命をあずけるために必ず必要な道具。

さて、足場の悪いところや危険なところをクリアするためには
ザイル(ロープ)というものを利用するのが一般的ではある。
金剛山でも難所には必ずといっていいほどトラロープが設置されている。
これのお世話になることも多いが、あまりにもトラロープを信用しすぎてないか?
補助的に使用すべきものなのに、完全にお世話になって体重まかせにつかんでいないか?
がっちり取り付けられていて、かつ、複数本垂れていたらまぁ大丈夫だろう。
しかし、どこのどなたがいつ設置してくれたものなのかはわからない。
ある日いたずらされていて、丸滝谷のあのトラロープが上に引き上げられていたこともあったという。
もっとエスカレートすると結び目を解かれていたりすると命にかかわることも。
登る人の少ないレアなルートではそんなトラロープすらあるとは限らない。
実際、高天谷ルートでは頼るものがなく、arajinさんのザイルにお世話になった。
たまたま一緒に登った人が持ってきてくれたので、という偶然に二度も助けられたわけだ。

そこで自分もその後にザイル(8mm☓20m)を買ったわけであるが、
これを装備して行ったときに限ってぜんぜん必要としないルートだったりはともかく、
必要とするルートであってもザックの底から取り出すのが面倒、と
せっかく持ってきているのに「濡らすと重くなる」やら「束ねるのが大変」などの理由から
できるだけ使わずに済まそうとする。
ベテラン登山者が遭難事故したというニュースもよく目にするから、
だいたいこんな理由で起たりする事例もあることだろう。

20101005-3.jpg
左のダイニーマ製のほうが価格は高く、120cmで1500円くらい。
右はナイロン製なので同じ強度だと太くなり、120cmで800円くらい。
左のほうは細くてもダイニーマ素材なので、同じ性能を発揮。軽くてかさばらない。


そこでやっとシュリンゲの話に戻る。
シュリンゲについては以前、なんとなく便利そうということで使い方も知らずに
とにかく1本だけ買ってザックに入れていたのが右の20mmもの。
ところが、先日、槙尾山でお世話になったのは左のタイプ、またはそれより細かったかも。
左のものは12mmであるが、好日山荘ではさらに細いBlackDiamond社の10mmのものも売られていた。
同じ強度で最高6mmというのもあるらしいが、使い方によっては食い込んで痛そう。

見た目、どう見ても太いほうが丈夫そうだし安心感がありそう。
ところがこのように太さの違うシュリンゲなのに、どちらも耐荷重が22KN
つまり同じ性能というわけ。
それはなぜかというと、太いほうはただのナイロン繊維なのに対して、
細い方は夢の新素材ダイニーマを使用しているから。
細いほうが軽くてかさばらないので、複数本常備しておくには最適だ。
しかもザックの中央のポケット(サイドだと樹の枝に引っかかったりすることも)
にカラビナと一緒に放り込んでおけば、さくっと取り出せてすぐに使える!

耐荷重:22KN
KNとはキロ・ニュートンという単位だ。
これは、2.2トンまでの物を吊り下げても耐えられるという設計である。
体重73kgぐらいの自分がつかんで全体重を預けても、支えるには必要十分すぎるスペックということになる。
実際にはそう単純なわけでもない。
現実には想定外のトラブルが起きることもある。
たとえば、忘れもしない2010年4月25日のこと
金剛山の高天谷ルートの最初の大滝を巻く、ほぼ垂直の壁をトラロープにつかまりながら登っていたときのこと。
二本に垂れ下がっていたトラロープを左手でつかみ、右手ではカメラを持って撮影しながら登っていたところ、
足を滑らせて滑落しかけるも、片手でトラロープを必至でつかんでいたので傷だらけになりながらも助かった。
(これ以後、絶対安全な状況でないと撮影しないことにした)

つまり22KNというのは静過重での耐荷重なわけで、
転落などが伴って一時的に強い力が加わると重力加速度も考慮しなければならない。
そうなった場合の計算をしてみた。

重力加速度 = 9.80665m/s2

なので、切れのよい数字として9.8とする。

例えば73kgの自分が、足を滑らせて1秒間の自由落下をすると、

73kg×1s×9.8=約715N(ニュートン)

これが3秒間となると、73kg×3s×9.8=約2,146Nでぎりぎりセーフとなる。
もし、3秒以上かかって落ちたところでシュリンゲがピーンと張って体重を支えた瞬間、
プッチーン!と切れてしまうことになるので注意が必要。

ちなみ標準的なカラビナでも縦のひっぱり耐荷重は23KN程度だ。
20101005-4.jpg

それでもシュリンゲは、カラビナと組み合わせて簡易ハーネスとして使えたり
手軽で何かと大いに役立つこと間違いなし。
こんな使い方がひとまず現実的ですね。木登りだってできそう。


トラロープもいろいろ材質があるが、いったいどの程度の耐荷重なのだろうか。
すんません。どう使うのかよく分かりません(笑)
コレが必要なルートにはまだまだ行けそうにないぱろやんです。

ところで、私のブログを見ていた祖母が、リンクからコチラの槇尾山行の記事を見たそうです。
私も参加していたものと思い込み、心配して、祖父が使っていたヘルメットをくれると電話がありましたよ(笑)

キバラーさんが次に手を出すグッズはきっとヘルメットですね。
[ 2010/10/06 00:44 ] [ 編集 ]
ぽろやんさんと同じで、どんな所でどう使うのか分かりません
本来の使い方も、勿論分かりません(笑)
ハーケンを打ち込みリング状の紐に足をかけて登る?そのリングですか?
何も分かりませんが興味はあります(笑)。

[ 2010/10/06 07:22 ] [ 編集 ]
今回の槇尾山では、中村さんの豪放磊落な奔放さに、ただただ引っ張られていっただけ・・という感じでした。
中村さんは、私のことをずいぶんと買い被ってはりますが、
むしろ私の方が、中村さんの大胆さに羨望を感じました。
私は基本的に小心者でビビリです。中村さんのようなおおらかで大胆な行動力は、私にとってあこがれです。
中村さん直伝のシュリンゲとカラビナを使った安全確保は、ずいぶん参考になりました。
私もシュリンゲ買います!!
[ 2010/10/06 19:25 ] [ 編集 ]
使い方はいろいろ応用ができまくりです。
シュリンゲは1本だとしんどいので数本ご用意を。
先日は、丈夫そうな木に巻いて、カラビナで別のシュリンゲを繋ぎあわせて
トラロープよろしく利用しました。
ほかに、横移動などでザイルを張ったトラバースを移動するときなど
簡易ハーネス的などをこしらえてクリアする方法です。
他の方のブログになりますが、以下の例など。
http://tekotan.exblog.jp/9146315/
ローブだと輪っかを作る場合は結ぶ方法を間違えると解ける危険がありますが、
シュリンゲは最初から輪っかなので便利です。
[ 2010/10/06 20:43 ] [ 編集 ]
高所はこわがりなので、ロッククライミングするつもりはありません。
補助的な道具としての応用という使い方です。
簡単な例では荷物を縛ったり、ザックを転がらないように木に
カラビナと組み合わせてぶら下げたり、留めたりと
想像つくような使い方しかまだ私にはできません。
[ 2010/10/06 20:43 ] [ 編集 ]
最初に「今日は危険なところも通ります・・」でちょっと緊張してしまいましたが、
中村さんの情熱と勢いに押されてとうとうクリアしてしまいました。
金剛山でもなかなかあんな危険なステージは奈良側にしかありませんね。
シュリンゲは手軽であんなに便利だとは思いませんでした。
持っていても使ったことなかった太い1本の私のシュリンゲ。
あれは何だったんでしょうね。笑
arajinさんにはザイルで助けられ、どれもこれも必然です。
これから必要な装備を気付かせてもらえたということでありがたいことです。
ただ、私の場合、それが必要なときにちゃんと持ってきているかが心配ではあります。
[ 2010/10/06 20:44 ] [ 編集 ]
スリングは長さを変えて数種類があり、その用途によって使い分けたり
組み合わせて使いますが、ここで重要なことは、これらの製品には
寿命があるということです。
たとえ大きな衝撃が加えられていなくとも、ある一定の時間が経過すれば
見た目がきれいであっても更新(今まで使っていたものを廃棄して買い換える)が
必要となります。

また、金属製品であるカナビラなどは、布製品に比べて長持ちしますが、
それでも一生モノではなく、定期的に器具の更新が必須です。

あとルート上にあるトラロープですが、これに体重を預けるのは
とても危険なので止めましょう。
なぜなら、ロープの素材自体に耐久性・耐候性がないのに加え、
ロープが設置された日時が分からないので、いつ何時ロープが
破断する分かりません。

親切心でロープを設置してくれた人に対して申し訳ありませんが、
これらのロープはいわば時限爆弾のようであり、ある一定の時間が経過した
後にこれらのロープを使う人を事故に追いやる危険があります。
無論、ロープの寿命が来る前に新しい物に交換されていればこの限りでは
ありませんが、その情報はロープを設置した者しかわからないので、
得体の知れないロープに体重を預けないことが自分の身を守る一番の方法です。


スリング、ザイル、下降器、登高器、ヘルメットなどを使う登山は
とても魅力的ですが、なにか事故が発生すると死亡事故につながる
危険な行為であることを自覚して、技術の習得と、器具の手入れと
更新が必要です。

登山をされる皆様、どうかご安全に。
[ 2010/10/06 21:54 ] [ 編集 ]
お仕事で業務用の本格的なものを使いこなしてらっしゃる大ベテランの夜登さんならではのコメントだけに説得力があります。
登山でクライミング等をされないのが不思議なくらいです。
あたりまえのようにトラロープを疑いもせずに使っているのを戒める良い機会にな、りました。
石ブテ東谷やら丸滝ではトラロープのお世話にならないと登れませんが疑ったことがありません。
今後はもっと慎重路線で、できるだけロープに頼らずに登れるように考えていきたいです。

[ 2010/10/06 22:22 ] [ 編集 ]
古びたトラロープ、ワイヤーも怖いですが
私が一番気にするのは支点ですね・・・
絶対に切れないロープがあったとしても
支点が脆けりゃ何の意味もないですから・・・

急斜面に立ってる木なんぞ、一応、手で揺すりますが何の信用にもなりません
22KN(キバラー様勉強になりました)など耐えられるわけないと思います
あくまでも「お助け紐」がわりにスリングを使っての簡易的な安全確保です。

「お助け紐」=ホールド、スタンスの突貫工事的なもの=古びたトラロープです

じゃあそんなとこ行くなよと言われればゴメンなさいです。
[ 2010/10/07 11:53 ] [ 編集 ]
私も今回いろいろ勉強させていただきました。
ありがとうございます。
さすが船舶免許で習得されただけあって、
ロープワークは手際よく見事でした。
トラロープはもっと疑って利用するようにします。
ザイルやシュリンゲが必要なステージ自体がめったにありませんけど、保険みたいなものですね。
[ 2010/10/07 21:17 ] [ 編集 ]
僕は山に残置されているロープや鎖はまったく信用していません。
ロープを掴んで登ると、体が法面から離れてしまい危険です。
基本三点確保で登り、咄嗟のときに掴む程度に考えておいたほうが良いですよね。
[ 2010/10/09 01:53 ] [ 編集 ]
私もトラロープは補助的にと思うようにしていて、
さほど危険でもないところは補助的に持つのですが、
丸滝谷ルートや石ブテ東谷ルート、さらにはクソマルとなってくると
お世話にならないわけにはいきません。
3点確保で登っているつもりなのですが、結構頼ってるかもしれません。
かといってそんなステージで、自前のザイルやシュリンゲを張るにも
だれがトップロープを張るねん状態ですからね。
トラロープを多少信用しないと金剛山のルートの幾つかが登れなくなりそうな。
こんど補助的な使い方の3点確保メインで丸滝谷や石ブテ東で試してみます。
[ 2010/10/09 23:57 ] [ 編集 ]
クソマル谷に行ってきましたが、ロ-プに頼らずとも充分登るのは可能でした。
かえって邪魔なくらい。
地下足袋でしたが登山靴でも同様だと思いますよ。
[ 2010/10/13 19:53 ] [ 編集 ]
ブログ拝見しました。
クソマル谷ルートは初でしたか。
大変お疲れ様でした。
ロープに頼らずに登るなんてコワすぎです。
奈良側では最もワイルドで圧倒されるルートだと思います。
単独だとさびしいですが、
私は一度登っただけで好きになりました。
今年の一月に一度登ったっきりになっています。
http://kivarn.blog83.fc2.com/blog-entry-652.html
[ 2010/10/13 20:27 ] [ 編集 ]
荷重計算が間違っています。正しい解が分からないのですが、間違っていることは確かです。左辺と右辺で次元が違うからです。
[ 2017/08/02 00:18 ] [ 編集 ]
ご指摘ありがとうございます。
研究してみます。
[ 2017/08/02 21:43 ] [ 編集 ]
すみません、通りがかりのものです.スリングの強度を調べていて、その単位、Nを改めて調べていてなんかよくわからなくなって検索していたら、キハラーさんのページに巡り合いました.

まず、73kg×3s×9.8m/s2=約2.146Nということですが、前出の匿名さんがおっしゃっているように、次元が違います.
そもそもN=kg・m/s2です.つまり、(質量)×(加速度)です.
キハラーさんの左辺は、kg×s×m/s2=kg×m/sとなり、つまり(質量)×(速度)で、これはPで表す運動量ということになります.

さらに2.146N=2.146kNであり、22kNの1/10程度で、ぎりぎりというものではありませんね.

ただ私も分からないのです.それならばなぜスリングの強度の単位をPで表さないのか、と.

キハラーさんの3秒間落下したら、という文言はとても説得力あります.落下時間後の速度によりスリングにかかるエネルギーが変わりますものね.
ん?エネルギー?ならばなぜJではないのでしょう?

なぜNで表すのでしょうか.私もわかりません.
[ 2017/10/04 19:16 ] [ 編集 ]
はじめまして。
深い考察、コメントありがとうございます。
勉強になります。
それにしても物理学の計算、難しいですね。。
理系なのに最近は数字で考えることが少なくなりました。(^^ゞ
ブログ、拝見させていただきました!
[ 2017/10/04 21:37 ] [ 編集 ]
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