大川口-行者還小屋の破線ルートにて ※後ろに鉄山 ※全編コンデジ撮影
ゆるゆる明瞭登山道と大展望にすっかり気を許していたら
恐ろしいステージが待っていた。<コース>
大川口-(北の破線ルート)-行者還小屋-行者還岳分岐-行者還岳-みなきケルン-七曜岳
-行者還小屋-天川辻-(南の破線ルート)-R309号行者還林道-大川口
用があって洞川方面に行くついでに軽く山登りできたらというライト感覚で決めた今回のルート。
行者還岳や七曜岳は過去に何度か行ってわかっているので、
前回の鉄山のときと同じ起点である大川口(おおこぐち)から
未踏の破線ルートを直登して行者還岳まで行き、
同じく並行している破線ルートで16時下山目標。
絶対に守らなければならない最終タイムリミットが17時だ。
余力と時間があれば七曜岳まで足を伸ばしても良いかなぁという思い。
コースタイム通りに歩ければ十分に七曜岳に行ける計算であったが、
そこはそんじょそこらの低山ではない読めない所があるのが大峰山脈である。
大変な目に会った。
傷んだ吊橋大川口を7時40分に出発。
朝が早いせいか、寒い寒いと腕組みしながらのスタート。
橋を渡ってすぐ左手にある傷んだ吊橋が北側の破線ルートの取り付きである。
そこはというと人を寄せ付けなさそうな薄暗い雰囲気が漂う。
3人以上同時に渡っては行けないという橋を共振しないようにおそるおそる渡る。
あと少しで渡り終えるという部分の踏み板を吊るすワイヤーが切れていたがなんとか渡れた。
大展望吊橋を渡って明瞭な踏み跡のある急登を登っていくと、間伐されている植林地帯があり
登山口取り付き部の暗さとはうってかわって明るいムード。
確実に人が入ってる山であることに安心してサクサク登って行く。
絶好の天気でもあり、登るにしたがって鉄山・弥山のほうの展望が広がる。
いつもながら思うのであるが、展望が広がったからといって
そこで景色を眺めて時間を過ごしてると、後にもっと展望の良いところがあって
手前での展望に時間をかけすぎた事に後悔することがある。
先を急ぐことにする。
最初のピークに登り切ったところでやっぱりスゴイ展望が待っていた。
行者還岳の尖った山容から奥駆道をずっと眺め回して弥山、そして鉄山、そしてさらにぐるっと
バリゴヤの頭、稲村ヶ岳、遠くに山上ヶ岳とほぼ360°に近い展望に20分くらい過ごした。
気になるものを認めると双眼鏡でそれが何なのか確かめてみる。
双眼鏡だと弥山小屋もはっきり見えたので、コンデジを双眼鏡とくっつけて超望遠撮影してみる。
ここから向かう先はアップダウンのありそうな深い森に入って行きそうだ。
樹林帯さきほどの名もない大展望のピークから少し下ったところのコルからは
スラっと一直線に尾根を登っていく。
実にまっすぐでわかりやすく雰囲気も明るくて気分ははゴキゲンである。
大きな倒木どれくらい歩いただろうか、等高線の詰んだ行者還岳の下をトラバースするルートに入る。
あくまでテープに忠実に歩いている。
このあたりでバリエーションルートにて行者還岳から西へ向かってゆるやかに伸びる尾根を登れば
安全に裏側(西側)から行者還岳に取り付けたかもしれない。
しかしながら先人たちがそれをルートとせずに大日岳の南側をへつって
行者還小屋のほうに回り込んでいるのにはそれなりの理由があるのかもしれない。
ここはテープを追って破線ルートを続行することにした。
途中、大きな倒木がありクリアするのに少々手間取った。
異臭ある場所を通過するとき、ものすごい異臭がした。
いままで嗅いだことのない臭いだ。
獣臭か?といわれるとちょっと違うようなかんじ。
危険なトラバースの始まりであったため、注意深くあたりを観察しているゆとりが無かったが。
危険なトラバーストラバースの距離は長い。行者還岳の南側をぐるっと取り囲むように行くことになる。
これが実にしょっぱい。
高い所が苦手な自分にとっては恐怖そのもの。
幅30cmくらいの廊下の右側は50mくらいの高さのほぼ垂直な崖のようなところがあるかと思うと、
垂直ほどではないにしても傾斜の急な斜面。これも転がり出すととことん転がり落ちていくようなところ。
何度緊張しただろうか、次から次へとやってくる危険ゾーンに気が気じゃない。
手に汗にぎる。
立入禁止テープそんなこんなでようやく平和な道になり行者還小屋が近づいてきた。
小屋の屋根が視認でき、人の声も聞こえてきた。
3時間に及ぶ所要時間と緊張でお疲れ気味。
大峯奥駈道に取り付く直前、いままで歩いてきたルートに進入しないようにとロープが張ってある。
赤テープに書かれた文字を見てみると「危険通行止」となっていた。
そんなところを歩いてきたのかぁ。。とショックを隠せない。
旧関電鉄塔跡奥駈道のどこに取り付いたかというと、小屋のすぐ近くの東側に展望の広がる場所。
15年前の地図を見るとここには関電の鉄塔があったようだ。
つまり鉄塔を撤去した跡地なので台形状になっていて、どうりで見晴らしも良いわけである。
謎の展望台あまりにも大台ケ原方面の展望が良いのでしばらく眺めていたら気になるものを発見。
肉眼でよく見ると展望台のようなものが見える。
さっそく双眼鏡を取り出して確認してみると、たしかに立派ながっちりした展望台だ。
すぐに山と高原地図で確認してみるも、何の情報も書かれていない。
どこかの公園にでもありそうな展望台があるのにそこまでのアクセスがわからない。
これと思われる尾根への取り付きが天川辻あたりにあるのだろうか。
帰りに確認してみようと思っていたら確認するのを忘れてしまった。
行者環小屋展望のあるところからすぐのところに行者還小屋。
登山者はざっと6~7人。
この無人小屋は美しい。
トイレ2つ、裏側にテント場に水の出る蛇口まであって至れりつくせりだ。
行者環岳へ行者還小屋から行者還岳へは地図を見ている限りはすぐのように思えるが、
実際にはあのそそり立った崖の上の高さまで登らなければいけないのだ。
小屋から軽く下り基調で歩いていると、突然の急登が目の前に迫る。
行者還岳って怖っ、と思わせるに十分な威圧感のある斜面が立ちふさがる感じ。
登山者が前後にチラホラ居なかったら怖そうな雰囲気の所である。
行者還岳への分岐はピークからずいぶん離れたところにある。
分岐からは奥駈道を外れて約10分弱、わざわざ行かないといけないのだ。
あと少しで山頂というところで単独の男性から声をかけていただきました。
ありがとうございました。
和佐又ヒュッテからの周回で行者還岳まで足を伸ばされたとか。
さらにはチャレンジ登山にも出られてらっしゃったとか。
なかなかの健脚者である。自分なら周回するだけでお腹いっぱいである。
山頂には8人くらいの集団など滞留している人が居た。
ピークを踏んで小屋を見下ろす展望を眺めてから
奥駈道分岐の近くまで戻ったところで12時近くになっていたのでお昼にする事にした。
モスキートヘッドネットザ・チェアに身を預け、のんびり昼食を楽しむ。
気温はというと寒いくらいであったが、無風だったので上に羽織りものをせずに過ごせた。
時々ブヨか小ハエのようなものが顔の周りに寄ってくる。
もう夏場とほぼ同じ虫環境である。
基本的に薬剤を使うのがイヤなので、過去にあまり出番の無かった
あの
モスキートヘッドネットを装着することにした。
でも実際にかぶってみるといちいちネットをめくりあげていては食事がしにくい。
めくりあげたネットを頭の上(帽子の上)に団子した状態、
つまり遠目には一見するとアフロヘアに見える状態にしておいたのだが、
なぜか虫が寄って来なくなった。
モスキートヘッドネットに含まれる虫よけ薬剤成分の効果なのだろうか、
それともアフロへアのドン引き?
七曜岳へ食事を終えて撤収が済んだところで13時20分になっていた。
七曜岳まで山と高原地図では一時間半となっているが、ここは分岐まで来ていることや、
この区間のコースタイムはたしか甘かったはずなのを思い出した。
15時に天川辻に到着しなければならないので、ダメもとで14時になったら引き返す覚悟で
七曜岳に向けて走らない程度のハイペースで歩いた。
みなきケルン分岐から歩き出してすぐのところにケルンがある。
どういうケルンなのか碑文を読んでみて、生きていれば自分の親くらいの年齢にしんみり。
七曜岳ハイペースで歩いたせいか、14時ちょうど、分岐から約40分で七曜岳に到着した。
なんとか2座を達成。
行きは分岐から少し上り基調で40分だったので、
戻りは行者還小屋まで50分も見ておけば大丈夫だろうと思ったので、
10分ほど七曜岳で休憩して景色などを眺める。
今日いちばんの眺めのポイントとしては、登りの最初のピークの場所が良かったかなぁ。
14時10分、折り返し再出発。
15時に天川辻に到着するのが目標だ。
雷雲七曜岳から行者還小屋まで戻っている途中、遠くのほうでゴロゴロと雷鳴が。
そういえば午前中はあんなに天気が良かったのに曇りつつあるようだ。
弥山の上空なんて鉛色の雲で覆われている。
これから大峰の夏がやってくるが、15時には下山完了する計画を立てたいところ。
というのは、大峰山脈の夏場は毎日のように午後遅くなってくると夕立・雷がある。
奥駈道は稜線を歩くのが主体であるため、雷が鳴ったところで立ち木のない稜線に居たら
格好のターゲットとなる。
今年こそは
ストライクアラートを活用してみたい。
再び行者還小屋へどうにかこうにか頑張って行者還小屋に15時ちょうどに到着できた。
これで安心したのか、10分も休憩してしまった。
天川辻へ行者還小屋から天川辻までは5分と歩かないほどすぐ近くである。
天川辻には奥駈道の案内石柱が立ってあったり地蔵があったりとわかりやすい。
15時15分、そこからいよいよ登りとは別の南の破線ルートで下山である。
取り付きのところには安全ルートというような事が書かれてあったので安心してつづらを下って行く。
なんと、このルートとて高所をトラバースするところがあって、
ドキっとする場所もあったりで、またもや登り時の危険なトラバースの悪夢再来。
「やや危険なルート」として認定したいところだ。
枯れ沢もうそろそろ下山完了かと思ったところで枯れた沢の中の、岩がゴロゴロするところを下りて行く。
これがなかなか長い。
ようやく下の川が見えてきたのでゴールかと思いきや、
沢を下り切ったところから川伝いに横移動。
どうやら小坪谷に着陸したわけで、その川が合流する布引谷のほうに行かなければならないのだ。
そんなこんなで横移動も長く、最後の橋を渡って林道に出たところで下山完了。
コースタイムから5分遅れて16時50分のことであった。
あとは大川口までR309号の行者還林道をひたすらハイペースで歩き、
17時ジャストに車に到着。
なんとか最終タイムリミットぴったりで終えることができた。
破線ルートは侮れないなぁと思った一日であった。
その他の写真は以下より。




大川口にて
左側(駐車場)の林道を詰めるとバリエーションで稲村ヶ岳に登れそう。

取り付き部の吊橋。 この看板の下の注意書き(後述)に気づかなかった。


踏み板は木製ではないが、後半部は固定用ワイヤーが外れている。

新緑がキレイな明るい雰囲気。

最初のピーク直前。背後に展望が付いてくる。

最初のピークからの大展望


弥山小屋 双眼鏡のレンズにコンデジを当てて超望遠撮影。
訂正:稲村ヶ岳はもう一つ右のピークです。

行者還岳がそそり立つ あそこに向かって登って行かなければならない。

最初のピークから行者還岳に向かって再出発


危険ゾーン 赤矢印のところにトレースがある。
このレベルはまだ序の口。転落するとアウトなところもあって撮影どころではなかった。

弥山・鉄山への展望 危険ゾーンのトラバースを終えて平和が戻ってきた。

ようやく大峯奥駈道に出る直前で、登ってきた道が通行止となっていた。汗;

旧関電鉄塔跡からの東方向への展望はすばらしい。
謎の展望台を発見。

謎の展望台を双眼鏡で確認してみた。たしかに展望台だ。テーブルもありそう。

行者還小屋 キレイなトイレが2つに、裏にはテント場に水のでる蛇口。
水場からの水を引いている。

行者還岳への手前の威圧感ある急登箇所。

行者還岳ピーク

行者還岳の垂直の崖の上から下を見下ろす。行者還小屋の屋根が見える。



七曜岳 滞留時間14:00-14:10で折り返し

みなきケルン
安らかに眠りたまえ
昭和四十年五月一日 二回生強化合宿に於き吉野より入山
小笹の宿より弥山方面へ縦走予定の五月三日悪天候に遭遇
当付近にて二回生田畑南樹君が疲労困憊のもとに意識不明に陥り
全員の不休の手当にもかかわらず翌四日朝霧のなか
二十二才の若魂はとこしえの眠りに・・・
ここにケルンを建碑し深く哀悼の意を表するものである
昭和四十一年五月
大阪工業大学体育会 ワンダーフォーゲル部

あの穴の奥に何かがある。地蔵のようなもの。
川まで下山してもまだ終わりではなかった。。

ようやく林道へ通じる吊橋にたどり着いた。
この吊橋も老朽化している。

R309行者還林道を大川口まで歩いて戻る。

登りの取り付きの吊橋をもう一度よく見るとこんな札が掛かっていた。